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東京地方裁判所 昭和40年(行ウ)117号 判決 1967年4月25日

原告 石井和夫

被告 東京陸運局長

訴訟代理人 上野国夫 外四名

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者双方の申立て

原告

一  主位的請求

被告が原告に対し昭和四〇年八月六日付六五東陸自一旅二第一、九〇八号をもつてなした昭和四〇年八月一二日から同年一一月一一日までの一般乗用旅客自動車運送事業の停止命令は無効であることを確認する。訴訟費用は、被告の負担とする。

二  予備的請求

被告が原告に対し昭和四〇年八月六日付六五東陸自一旅二第一、九〇八号をもつてなした、昭和四〇年八月一二日から同年一一月一一日までの一般乗用旅客自動車運送事業の停止命令はこれを取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。

被告

一  原告の訴えをいずれも却下する。訴訟費用は原告の負担とする。

二  原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。

第二原告の主張

一  請求の原因

1  原告は、昭和三八年一一月二二日一般乗用旅客自動車運送事業の免許を受け、石井タクシーという商号でいわゆる個人タクシー事業を営んでいる者であるが、病気休業中の昭和四〇年二月三日、たまたま来遊した旧友の自動車運転手訴外土屋幸三の求めにより、同人に原告の営業車(車輛番号足5あ七〇二三号)を使用させたところ、同人は翌四日右車輛を運転し追突事故を起こした。

しかるところ、被告は、原告が右訴外人に右車輛を運転させたことは、道路運送法一二〇条の規定により付した免許条件に違反する、との事由で、同法四三条の規定に基づき、原告に対し、同年八月六日付六五東陸自一旅二第一、九〇八号をもつて同年八月一二日から一一月一一日まで一般乗用旅客自動車運送事業の停止を命ずる旨の処分(以下「本件停止処分」という。)をした。

2  しかし、道路運送法四三条の規定により事業の停止を命ずることは運輸大臣の権限に属し、陸運局長の権限ではない。のみならず自動車運送事業の停止を命ずるには、運輸省設置法六条により運輸審議会にはからなければならないのに被告は運輸審議会にはかつていない。それ故被告の本件停止処分は無効である。

すなわち、道路運送法四三条所定の運輸大臣の職権は、(1)輸送施設の当該事業のための使用の停止を命ずること、(2)事業の停止を命ずること、(3)免許を取り消すことの三事項であるところ、同法施行令四条一項は、運輸大臣の職権のうち陸運局長に委任する事項を列挙し、その一二号に法四三条の規定による運輸大臣の職権のうち陸運局長に委任するものとして特に輸送施設の使用の停止の命令のみを挙げているが事業の停止命令、免許の取消しについてはこれを挙げていない。そして、同項一九号が「運輸大臣の職権であつて一般乗用旅客自動車事業等に関する事項で前各号及び次項に規定する事項以外のもの」は陸運局長に委任するものとしているが、右のように同項一二号が特に輸送施設の使用の停止の命令のみを挙げて、事業の停止命令や免許の取消しなどを挙げていないところから考えれば、施設の使用停止命令は陸運局長に委任された事項であるが、事業者の職業生活に重大な影響をおよぼす事業の停止命令および免許の取消しは、重要事項としてこれを運輸大臣の職権事項に留保し、陸運局長に委任していないものと解すべきである。したがつて、事業停止命令を行なうには運輸大臣が運輸省設置法六条一項七号の規定により運輸審議会にはからなければならない。

3  仮りに本件停止処分が無効でないとしても、本件停止処分には右のとおりのかしがあるから取り消されるべきである。

4  よつて、被告が原告に対しなした本件停止処分につき、主位的に無効確認を求め、予備的にその取消しを求める。

二  被告の本案前の主張に対する反論

1  被告は、道路運送法施行規則六三条一項の規定により、昭和四〇年九月二日「東京都特別区における個人タクシーに対する行政措置の方向について」と題して左記事項の公示をした。

免許について、(一)適格者に対する免許は、引続きこれを継続するが、個人タクシーの質を向上し、その特長を維持するため、今後道路運送法、道路交通法令の遵守状況等に重点を置きより厳正に審査を行う。(二)増強の時期と車両数の決定については、社会的、経済的指標との相関により長期の見通しを樹てた上、既存タクシー事業者の経営状況、輸送状況の実績を基礎にして行う。

既存事業者に対する指導監督について、(一)法令又は免許条件の遵守、車輛の整備、稼働体制等についての指導監督をより強化し、個人タクシーの好評を維持するようにつとめる。法令又は免許条件の違反者等悪質なものについては、厳格な態度をもつてのぞむ。(二)免許期限の更新に当つては、(一)の事項のほか、過去三年間における責任事故の有無、報告の提出状況等をチエツクする等この機会を指導監督の場として活用する。

右の公示によれば、本件停止処分は、原告の免許期限の更新に当つて不利益な前歴として取り扱われることが明らかであるから、原告は本件停止処分の取消しを求めるにつき、なお法律上の利益を有する。

2  原告が被告主張の審査請求をしていないことは認める。しかしながら運輸大臣は本件停止処分についての原告の照会に対し、昭和四〇年九月八日付をもつて、本件停止処分は一般乗用旅客自動車運送事業に関して行なつた処分であり、法令上その処分権限は東京陸運局長に属する旨別紙のとおりの回答をしている。したがつて、原告が審査請求をしても、右回答と同旨の見解をもつて却下の裁決がなされることが明らかであり、審査請求はいたずらに時間と手数を費すのみで無益であるから、行政事件訴訟法八条二項三号に該当し、裁決を経る必要はない。

第三被告の主張

一  本案前の主張

1  本件停止処分による事業停止期間はすでに経過したから本件訴えはその利益がない。

すなわち、原告は、本訴において、被告が昭和四〇年八月六日付でなした昭和四〇年八月一二日から同年一一月一一日まで事業の停止を命ずる旨の処分の無効確認を求め、予備的に、右処分の取消しを求めているが、本訴提起後において右停止期間は、すでに経過したから本件各訴えはその利益がなく不適法である。けだし、停止期間が経過した後においては、本件停止処分は、原告の事業を停止せしめるなんらの効力を有せず、判決により無効が確認され、あるいは取り消されるまでもなく、原告は右処分を受ける以前の状態と同一の状態を回復し、自由に事業を行なうことができ、したがつて、原告は現在、本件停止処分によりその法律上の地位になんらの影響を受けていないというべきであるから無効確認を求める利益がなく、また、本件停止処分が取り消されても法律上の地位が回復されるわけではないから取消しを求める利益もない。

なお、事業の停止命令を受けた者が道路運送法上、以後不利益な取扱いを受ける旨の規定はなんら存在しない。もつとも、被告が原告主張のような公示をなしたことは認めるが、しかし、右の公示は一読して明らかなとおり、免許期限の更新に当つて道路運送法、道路交通法の遵守状況を重視するというのみであつて、免許停止処分の有無が特に問題なのではなく、法令の遵守状況が問題なのである。しかも、原告は本件停止処分の原因である道路運送法違反の事実についてはこれを争つてはいないのであり、いずれにしても本件停止処分の存在自体によつて将来免許期限の更新に当つて不利益を受けることはない。したがつて、この点からももはや本件停止処分の無効確認ないし取消しを求める法律上の利益は失われたというべきである。

2  道路運送法一二一条は、同法四三条の規定による処分の取消しの訴えは、当該処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又は裁決を経た後でなければ、提起することができない旨規定しており、本件停止処分は、右の四三条の規定に基づいてなされたものであるから、当該処分についての審査請求をし、その裁決を経た後でなければ、本件停止処分の取消しの訴えを提起することができない。しかるに、原告は、本件停止処分に対し、審査請求をしていないから、本件停止処分の取消しの訴えは、審査前置の要件を欠くものであり、不適法な訴えとして却下されるべきである。

なお、原告の主張するように、運輸大臣が本件停止処分の権限が被告にあると回答しただけでは「裁決を経ないことにつき正当な理由がある」ということはできない。

二  本案の答弁および主張

1  答弁

(一) 請求原因1の事実を認める。

(二) 同2から4までの主張の趣旨はすべて争う。

2  主張

道路運送法四三条に基づく運輸大臣の自動車運送事業の停止を命ずる権限のうち一般乗用旅客自動車運送事業に関するものは、陸運局長に委任されている。また、運輸省設置法六条は、運輸大臣が処分をなす場合の規定であり、本件停止処分のごとく陸運局長がなす処分については適用がないから、被告が本件停止処分をなすについて、運輸審議会にはからなかつたのは当然であり、なんら違法ではない。

(一) 道路運送法一二二条一項は、この法律に規定する運輸大臣の職権の一部は、政令で定めるところにより下級の行政庁に委任することができる旨を規定し、同法四三条により事業の停止を命ずる運輸大臣の権限のうち一般乗用旅客自動車運送事業に関するものが、同法施行令四条一項一九号によつて陸運局長に委任されていることが明らかである。

すなわち、道路運送法施行令四条一項一九号は、道路運送法四三条の運輸大臣の権限のうち同条一項一号から一八号までおよび同条二項に規定された以外のものでタクシー事業(一般乗用旅客自動車運送事業)に関するものは陸運局長に委任しているが、乗合バス事業(一般乗合旅客自動車運送事業)ならびに路線トラツク事業(一般路線貨物自動車運送事業)に関するものは委任していないから、これらは依然として運輸大臣の権限として留保されているのである。(一号から一八号までは、バス、タクシー、トラツク等に区別することなく自動車運送事業一般について規定している。)

(二) 運輸審議会は、運輸大臣の職権行使が、国民生活に直接かつ重大な影響をおよぼすことにかんがみ、公共の利益を確保するため諮問に対して公平かつ合理的な決定を行ない、運輸大臣の意思決定の参考とするため運輸本省に常置された機関である。したがつて運輸審議会にはかることを要するのは、運輸大臣が自ら職権を行使する場合に限られるのであり、権限が陸運局長に委任された場合、陸運局長がその権限の行使につき運輸審議会にはかることを要しないのは当然である。

ちなみに現行の道路運送法は、運輸省設置法が公布施行(昭和二四年)され、運輸審議会が設けられた後である昭和二六年に公布施行されたものであるが、運輸省設置法の公布施行前に公布施行されていた旧道路運送法(以下旧法という。)四条五項は、現行道路運送法におけると同様に運輸大臣の権限の一部は政令の定めるところにより下級行政庁に委任する旨規定し、事業の停止等を命ずる権限(旧法三〇条)は、道路運送法施行令の一部を改正する政令(昭和二三年五月七日付政令第一〇六号)により改正された同令一八条により特定道路運送監理事務所長(現在の陸運局長に相当する。)に委任されていた。そして、運輸省設置法は、このようにその公布施行前から運輸大臣の権限の一部が下級行政庁に委任されている前提のもとに新たに運輸本省に運輸審議会を設置し、運輸大臣は処分を行なうに際し所定事項について運輸審議会に諮問すべきこととした。かかる立法の経過からみても運輸省設置法六条は運輸大臣が下級行政庁に委任した事項には、適用がないというべきである。

また、運輸省設置法六条二項は、「前項各号に掲げる事項のうち運輸審議会が軽微なものと認めるものについては、運輸大臣は運輸審議会にはからないでこれを行うことができる」と規定している。これは本来、運輸大臣が自ら権限を行使する場合に関する規定であつて下級行政庁に権限を委任した場合は含まれないのであるが、道路運送法施行令に列挙されている委任事項は、仮りに運輸大臣が自ら権限を行使した場合においても、上記運輸省設置法六条二項により運輸審議会にはかることを要しないような軽微事項ばかりなのである。すなわち、道路運送法施行令で委任事項を法定するに際しては、運輸大臣と運輸審議会との間で何を委任事項とするのが相当かについて詳細な検討が行なわれ、その結果、諮問を要しないような軽微事項ばかりが委任事項とされたのである。

さらに、運輸省設置法は、運輸大臣の下部の地方機関として陸運局をおき運輸大臣から委任された権限に基づく行政を行なわしめている。若し運輸大臣が陸運局長に委任している事項について陸運局長が処分を行なうには運輸本省に設けられた運輸審議会にいちいち諮問したうえでしなければならないとしたら、法が下級行政庁に職権を委任したこと自体意味のないことになる。したがつて道路運送法一二二条自体、権限を委任した場合には、諮問を要しない趣旨を含むものと解すべきである。

第四証拠関係<省略>

理由

一、原告が昭和三八年一一月二二日一般乗用旅客自動車運送事業の免許を受け、石井タクシーという商号でいわゆる個人タクシー事業を営んでいる者であること、被告が昭和四〇年八月六日、道路運送法一二〇条の規定による免許条件に違反したことを理由として原告に対し同年八月一二日から一一月一一日まで右事業の停止を命ずる旨の本件停止処分をなしたことはいずれも当事者間に争いがなく、右停止期間が本件訴訟の係属中にすでに経過したことは記録に徴し明らかである。

ところで、一般には右のように処分に附された期間が経過したときは処分の効果がなくなり訴えの利益は失われるわけであるが、処分の効果が期間の経過によりなくなつた後においてもなお処分の無効確認を求むべき利益が残存し又は処分の取消しによつて回復すべき利益がある場合には、期間の経過後といえども処分の無効確認又は取消しを求める訴えの利益は失われないと解すべきところ、昭和四〇年九月二日、被告が道路運送法施行規則六三条一項の規定により、原告の主張するような公示(前示第二、二、1)をしたことは当事者間に争いがなく、右公示によれば、既存事業者として、免許条件違反を理由とする本件停止処分のごとき処分がなければ、いわゆる免許期限の更新にあたり、新規免許申請者に比し優位の地位が法的に保障されているものというべきであるから、上記のようにすでに停止期間が経過しても、なお本件停止処分の無効確認又は取消しを求める訴えの利益は失われないものと解するを相当とする。

被告は、右の公示においては本件停止処分のごとき処分の有無が特に問題なのではなく、道路運送法、道路交通法等の法令の遵守状況が問題なのであつて、しかも本件停止処分の原因たる免許条件違反の事実については原告においてこれを争つていないのであるから、本件停止処分の存在自体によつて将来免許の更新に当つて不利益を受けることはない旨主張するが、しかし、免許条件違反の事実があつても必ずしも事業停止命令の処分を相当としてこれらの処分がなされるとは限らないのであつて、免許の更新にあたり本件停止処分のごとき処分を受けている者が、単に法令違反の事故ある者に比し不利益な地位にあることは条理上当然というべきである。したがつて、被告の右主張は採用することができない。

二  道路運送法一二二条一項に基づき、同法施行令四条一項は、運輸大臣の権限であつて、左記に掲げるものは、陸運局長に委任するとし、そのうち、一号から一八号までは、タクシー事業、乗合バス事業、路線トラツク事業等に区別することなく自動車運送事業全般(自動車運送事業の種類については同法三条参照)についての事項を規定し、一九号は、右自動車運送事業のうちの一般乗用旅客自動車運送事業等の業態のものを特定してそれらの事業に関する事項であつて、前各号および同条二項に規定する事項以外のもの、と規定している。したがつて、道路運送法四三条に規定する運輸大臣の権限のうち輸送施設の停止命令については、右施行令四条一項一二号により自動車運送事業の業種を区別せず陸運局長に委任されているが、事業の停止命令、免許取消しについては、業種を分けて、タクシー事業(一般乗用旅客自動車運送事業)に関するものは陸運局長に委任しているが、乗合バス事業(一般乗合旅客自動車運送事業)ならびに路線トラツク事業(一般路線貨物自動車運送事業)に関するものは、これを委任せず、運輸大臣の権限として留保していることが文理上明らかである。そしてまた、運輸省設置法六条は、運輸大臣がみずから権限を行使して処分を行なう場合に関する規定であるから、上記のように陸運局長に委任した事項については適用がないと解するのが相当である。

したがつて、本件停止処分には、原告が主張するような違法(無効又は取消原因となるかし)はない。

三  なお、被告は、原告において道路運送法一二一条、四三条の規定により、運輸大臣に対し審査請求をなし、その裁決を経た後でなければ本件停止処分の取消しの訴えを提起することができない旨を主張し、右事実は原告の認めるところであるが、しかし、行政事件訴訟法八条一項が処分の取消しの訴えと審査請求との選択主義を採用しながら、例外として他の法律で審査請求前置の規定を設けることを認めることにしているのは、処分によつては訴訟前にまず行政庁に反省、是正の機会を与えるのを相当とするものもあるという趣旨であると解されるから、原告が処分の違法事由として訴訟において主張している事項について、すでに裁決庁において正式に回答等をしており、改めて審査請求をしても救済の実を期待することができないような場合には、同条二項にいわゆる「裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき」に該当すると解するを相当とするところ、本件において、運輸大臣が、昭和四〇年九月八日、原告に対し、運輸省設置法六条一項の規定は、運輸大臣の権限に属する事項であつて同項各号に掲げるものについて運輸大臣が必要な措置をする場合に運輸審議会に諮問すべきことを定めているのであつて、運輸大臣の権限を法令上他の者に委任したものまでも諮問すべきことを定めたものではない、一般乗用旅客自動車運送事業に関しては、道路運送法一二二条一項の規定に基づく道路運送法施行令四条一項および二項の規定により、すべて運輸大臣の権限を陸運局長および都道府県知事に委任している、本件停止命令および附帯命令は、一般乗用旅客自動車運送事業に関し行なつた処分であり、法令上その権限は東京陸運局長に属する事項であつて運輸大臣の権限に属するものではない、したがつて、上記処分と運輸省設置法六条一項に規定する諮問事項とは無関係のことであり、運輸審議会に諮問すべき理由はない旨の回答をなしたことは当事者間に争いがなく、右は、原告が本件停止処分の違法事由として本件訴訟において主張しているところと同旨の問合せに対する運輸大臣の正式の回答であると認められるから、原告が本件停止処分に対し改めて裁決庁である運輸大臣に審査請求をしてみても、右の回答と結論を異にする裁決を期待することはできないものというべく、かかる場合には前示審査前置主義の趣旨にかんがみ「裁決を経ないことにつき正当な理由がある」ものと解するのが相当である。それゆえこの点に関する被告の主張はこれを採用しない。

四  以上のとおりであるから原告の主位的請求および予備的請求をいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 杉本良吉 高林克已 仙田富士夫)

別紙

「運輸省設置法六条一項の規定は、運輸大臣の権限に属する事項であつて同項各号に掲げるものについて運輸大臣が必要な措置をする場合に運輸審議会に諮問すべきことを定めているのであつて、運輸大臣の権限を法令上他の者に委任したものまでも諮問すべきことを定めたものではない、一般乗用旅客自動車運送事業に関しては、道路運送法一二二条一項の規定に基づく道路運送法施行令四条一項および二項の規定により、すべて運輸大臣の権限を陸運局長および都道府県知事に委任している、本件停止命令および附帯命令は、一般乗用旅客自動車運送事業に関し行なつた処分であり、法令上その権限は東京陸運局長に属する事項であつて運輸大臣の権限に属するものではない、したがつて、上記処分と運輸省設置法六条一項に規定する諮問事項とは無関係のことであり、運輸審議会に諮問すべき理由はない。」

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